産業廃棄物のマニフェストとは? 目的や実際の流れ、書き方など解説
事業で使用した廃棄物はすべて産業廃棄物扱いとなりますが、たくさんの廃棄物をどこでどのように処理したのか把握することは困難です。そこで、産業廃棄物の流れを把握するために、法律で「マニフェスト制度」が義務づけられました。産業廃棄物管理表の意味を持つマニフェストは、正しく処理するために必要なものです。
そこで、本記事では、産業廃棄物のマニフェストについて詳しく解説します。
この記事を読むことで、産業廃棄物のマニフェストの内容や注意点などが分かります。気になっている方は、ぜひチェックしてください。
1.産業廃棄物のマニフェストとは?
最初に、産業廃棄物のマニフェストとはどういうものなのか、基礎知識を習得しておきましょう。また、マニフェストの対象者や紙と電子の違いについても解説します。
1-1.産業廃棄物とは事業者から出たゴミ
家庭から出るゴミのことを一般ゴミといいますが、事業者から出るゴミのことは産業廃棄物といいます。産業廃棄物の処理責任は事業者にあり、責任を持って正しく処理しなければなりません。さらに、産業廃棄物は「事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、法令で定められた20種類」と「特別管理産業廃棄物」があります。それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。
法令で定められた20種類
- 燃えがら
- 汚泥
- 廃油
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴミくず
- 金属くず
- ガラスくず
- コンクリートくずおよび陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動植物性残さ
- 動物系固形不要物
- 動物のふん尿
- 動物の死体
- 以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの(コンクリート固型化物など)
特別管理産業廃棄物
- 廃油・廃酸・感染性産業廃棄物
- 特定有害産業廃棄物:廃PPCB等・PCB汚染物・廃水銀等など
1-2.マニフェストは「産業廃棄物管理伝票」
産業廃棄物の多くは業者へ処理を依頼することになりますが、委託処理する産業廃棄物はマニフェストで管理することが法律で義務づけられています。マニフェストとは、産業廃棄物を排出する事業者が交付する産業廃棄物管理伝票のことです。マニフェストを用いることで、大量の産業廃棄物でも流れが把握でき、適切な方法で廃棄できます。近年、回収業者による不法投棄が問題になっていますが、数々のトラブルを未然に防ぐことができるのです。
1-3.マニフェストは排出事業者が発行するもの
産業廃棄物のマニフェストは、委託先の運送業者が用意するケースがありますが、本来は排出事業者が発行すべきものです。そのため、マニフェストの記載事項に関して何らかの不備があれば、その責任を問われるのは排出事業者となります。マニフェストに関する知識がない排出事業者の負担を減らすため、運搬業者などが代行しているのです。運送業者や回収業者がマニフェストにサインをした時点で、排出事業者が責任を持って発行した証(あか)しになるでしょう。
1-4.紙と電子それぞれのメリット・デメリットを知ろう
マニフェストの種類を大きく分けると、「紙」と「電子」の2種類があります。最近は、紙から電子マニフェストへの義務化が進められていることもあり、検討している排出事業者はたくさんいるはずです。けれども、電子マニフェストにもデメリットがあります。デメリットを把握することで、上手に使うことができるでしょう。以下に、紙と電子それぞれのメリットとデメリットをピックアップしました。
紙のメリット
- 特別な環境や技術が必要ない
- 低コスト
- ほとんどの業者が対応している
紙のデメリット
- 紙を管理する必要がある
- 大量の廃棄物を処理する際は管理が大変
電子のメリット
- 大量の情報が管理しやすくなる
- 紙を保管する必要がない
- 排出した産廃情報にアクセスしやすい
- 産業情報の記入ミスが少なくなる
電子のデメリット
- インターネット環境が必要
- 導入コストなど紙よりもお金がかかる
どのくらいの頻度で産業廃棄物が出るのか・1度でどのくらいの産業廃棄物を処理しなければならないのかなどを考えた上で、紙か電子か選択してください。
2.産業廃棄物マニフェストの内容
それでは、産業廃棄物マニフェストの内容について詳しく解説します。
2-1.マニフェストの大まかな流れ
マニフェストの大まかな流れを以下にピックアップしました。実際の流れをある程度把握しておくと、うまく活用できるようになるでしょう。
2-1-1.産業廃棄物の発生
事業で使用したゴミ=産業廃棄物が発生したら、排出事業者はすぐにマニフェストを準備し、必要事項を記入してください。マニフェストは全部で、A・B1・B2・C1・C2・D・E表の7枚です。ちなみに、マニフェストは各県の産業廃棄物協会で購入できます。
2-1-2.排出事業者から収集運搬業者へ引き渡し
産業廃棄物を収集運搬業者へ回収してもらう際に、用意したマニフェストも渡します。収集運搬業者はA票を排出事業者へ戻し、残りの6枚の伝票は廃棄物と一緒に次の工程で使用することになるのです。
2-1-3.収集運搬業者から中間処理業者へ引き渡し
産業廃棄物を収集した運搬業者は中間処理業者へ運びます。その際に、運搬業者はB1票とB2票を受け取り、B2票を排出事業者に返送し運搬完了を報告するのです。そして、残り4枚の伝票は中間処理業者が受け取ります。
2-1-4.中間処分完了
選別などが行われ中間処理されると、中間処理業者は中間処理完了の報告として、C2票を運搬業者へ、D票を排出事業者へ送付します。C1票は中間処理業者の控えとなり、E票は最終処分が終わるまで管理するというわけです。
2-1-5.最終処分完了
中間処理業者から最終処分処理業者へ産業廃棄物が移されると、E票が排出事業者へ送付されます。その送付で最終処分完了の報告になるのです。最終的に、排出事業者の手元にA票・B2票・D票・E票、収集運搬業者にB1票・C2票、中間処理業者にC1票が残ります。
2-2.マニフェストの書き方
マニフェストには、必要事項をきちんと正しく記載する必要があります。具体的に、どのような内容を記載すべきか、押さえておきたい項目と内容を下記にまとめたのでぜひ参考にしてください。
- 交付年月日欄:マニフェストを交付した年月日
- 交付担当者欄:交付した担当者の署名と捺印
- 排出事業者欄:排出事業者の名称・住所・電話番号
- 排出事業場欄:実際に産業廃棄物を出す場所の名称・所在地・電話番号
- 産業廃棄物欄:産業廃棄物の種類に該当する項目にチェックを入れる。名称・数量・荷姿・処分方法なども記入
- 最終処分の場所欄:「委託契約書記載のとおり」をチェックするか、産業廃棄物が最終処分される処分場の名称・所在地・電話番号
- 運搬受託者欄:産業廃棄物を運搬する業者の名称・住所・電話番号
- 処分受託者欄:産業廃棄物を処分する業者の名称・住所・電話番号
- 運搬先の事業場欄:産業廃棄物が搬入される処分業者の処分事業場の名称・所在地・電話番号
- 運搬担当者の記入欄:実際に運搬を引き受けた者の署名・捺印
- 処分業者の記入欄:最終処分終了年月日・最終処分を行った場所などを記入
- 照合確認欄:B2票・D票・E票が返送される際、それぞれA票と照合確認し、その日付を記入
産業廃棄物を排出する側はすべてを記入する必要はありません。自分が記入すべき箇所だけ記入し、後はそれぞれ過程にあわせて運送業者や処分業者が記入していきます。また、当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その数量の記入も必要です。
2-3.管理票を記入する際に気をつけておきたいこと
産業廃棄物管理票制度に沿ってマニフェストをきちんと作成しなければなりませんが、管理票に必要事項を記入する際は、注意しておきたいことがたくさんあります。たとえば、交付番号は事業者が当該管理票を特定できる任意の番号を記載する・交付を担当した者の氏名は管理票の交付を担当した従業員の氏名にすることなどです。分からない点があれば、自治体の産業廃棄物協会ホームページをチェックしてください。経済産業省のホームページでも確認できますよ。
3.産業廃棄物マニフェストの注意点
では、最後に産業廃棄物マニフェストの注意点をチェックしておきましょう。
3-1.マニフェストの運用基準
産業廃棄物のマニフェストには細かい運用基準が設けられています。それは、以下のとおりです。
- 廃棄物の種類ごとに交付する
- 運搬先の事業場ごとに交付する
- 廃棄物の引き渡しと同時に交付する
- マニフェストは5年間保管する
- 処理委託契約書とマニフェストの記載内容に相違がないことを確認する
3-2.マニフェストに関する罰則
産業廃棄物のマニフェストは法律で義務づけられているため、遵守しないと義務違反として罰則を科せられることになります。主な罰則は以下のとおりです。
- 委託基準違反:5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金
- マニフェスト不交付:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト未記載:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト虚偽記載:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト保存義務違反:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
- マニフェスト確認義務違反:措置命令の対象
また、紙のマニフェストの場合、産業廃棄物管理票交付等状況報告義務があります。毎年6月末に前年度のマニフェスト交付状況を管轄する都道府県に報告書としてまとめて提出する義務です。電子マニフェストに関しては、この義務は免除されることになります。
3-3.よくあるミスをチェック!
産業廃棄物のマニフェストでよくあるミスといえば、排出事業者によるA表の記載もれや誤記載です。たとえば、産業廃棄物の適切な数量が書かれていなかったり、品目や住所が間違っていたりなど、細かなミスが見られます。提出前に、何度も見直したほうがいいでしょう。また、排出事業者へ返送されるB2票・D票・E表の保管もれもよくあるミスなので、大事に保管しておくことが大切です。
3-4.マニフェスト講習を受けるのもアリ
公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センターなどでは、定期的にマニフェストに関する講習を実施しています。基本的な書き方から、電子マニフェストの操作体験などさまざまな内容があるので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。講習を受けることで、正しい産業廃棄物処理の知識を得ることができます。
4.産業廃棄物のマニフェストに関してよくある質問
マニフェストに関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.排出事業者の責任はどこまで?
A.交付すれば責任を果たしたことにはなりません。排出事業者は、マニフェストをきちんと交付してから返送されてくるマニフェストの内容を照合・確認し、それを5年間適切に保存することまでが責任なのです。問題のないマニフェストに関しては、社内規定に定められた決まりに基づき保存してくださいね。
Q.マニフェストを正しく記入し交わすことのメリットは?
A.地球環境を保護するのはもちろん、事業場や自分自身の身を守ることにもつながります。もし、回収してもらった産業廃棄物が不法投棄されたり、不正な方法で処理されたりすると罰金を科せられることになるのです。マニフェストは、これらの不正行為を未然に防ぐことができます。
Q.マニフェストを効率的に作成するポイントは?
A.紙マニフェストを使用する際は、事前にひな型を作成しておくといいでしょう。また、電子マニフェストに移行するのも方法の1つです。システム上に登録すると、毎回チェックする必要がなく、手間の削減につながりますよ。
Q.マニフェストの問題点は?
A.委託をせずに自社で産業廃棄物を処理する場合は、マニフェストの交付が義務づけられていません。そのため、排出事業者自らが不法投棄をしたり、不適切な処理をしたりする可能性があります。今のところは、自社処理が大きな問題になっているようです。
Q.産業廃棄物の回収業者を選ぶ際のポイントは?
A.どのように廃棄するのか・丁寧かつスピーディーに回収してくれるか・スタッフの対応がいいか・回収実績があるのかなど、多数の項目をチェックすることです。特に、見積書の内訳が記載されているか必ず確認してください。不用品回収・買取を行っているダスト.net 東京では、無料見積もり・無料相談を受けつけています。
まとめ
産業廃棄物のマニフェストは、産業廃棄物の適切な処理を推進するために設けられた制度の1つです。マニフェスト=管理表があるからこそ、産業廃棄物がどのような流れで処理されたのか確かめることができます。マニフェストはきちんと書かなければならないため、基本知識を習得することが大切です。また、回収業者を利用する際は、なるべく実績のある優良業者を選びましょう。業者選びも、産業廃棄物を正しく処理する大切なポイントとなります。